カラメル化糖分解酵素の発見

口腔内から単離されたビフィズス菌であるBifidobacterium dentiumから、DFA Iのα-フルクトフラノシド結合を加水分解してイヌロビオースという二糖を生じる酵素「DFA Iシンターゼ/ヒドロラーゼ」とその遺伝子を発見しました。酵素の配列新規性が認められた結果、糖質分解酵素ファミリー172とEC4.2.1.179が新設されました。
 果糖とも呼ばれるフルクトースは、砂糖やイヌリンに含まれています。加熱調理中のカラメル化反応により褐色になりますが、この反応の際に脱水縮合反応が起こり、様々な化合物が生じます。その中に、2分子のフルクトースが脱水縮合したジフルクトースアンヒドリドI(DFA I)、ジフルクトースアンヒドリドIII (DFA III)などがあります。本酵素はヒトの口腔内や腸内に生息するビフィズス菌から得られたこと、天然の植物由来のフルクトース含有糖にはこの酵素が切断する化学結合が見つかっていないことなどから、微生物が宿主であるヒトとの共生関係のもと、人類が火を使うようになった以降に、食料中の糖質を分解・代謝する酵素として出現したと推測しました。
 本研究はカラメルや黒糖に含まれる主要なオリゴ糖であるDFA Iのビフィズス菌における分解メカニズムを初めて明らかにしたものであり、機能性オリゴ糖としてDFAIの価値が見直されることも期待できます。しかし、DFAIの詳細な分解代謝メカニズムの解明や他の細菌との関係も考慮する必要があり、さらなる研究が求められます。

GH172 difructose dianhydride I hydrolase  (αFFase1; BBDE_2040)

  • Kashima, T., Okumura, K., Ishiwata, A., Kaieda, M., Terada, T., Arakawa, T., Yamada, C., Shimizu, K., Tanaka, K., Kitaoka, M., Ito, Y., Fujita, K., and Fushinobu, S.: Identification of a difructose dianhydride I synthase/hydrolase from oral bacterium establishes a novel glycoside hydrolase family. J. Biol. Chem.,  297, 101324 (2021).doi: 10.1016/j.jbc.2021.101324 JBC GH172  EC4.2.1.179 
  • 鹿島騰真、石渡明弘、藤田清貴、伏信進矢:カラメルに含まれるオリゴ糖を分解する酵素の同定と構造基盤,生物物理,62(3),184-186(2022). J-stage

詳細は鹿児島大学研究トピック東京大学研究トピックスをご覧ください。